自明性に対する不採算的反論

米国以外の出願人による反論に、次の類があります。「審査官による先行技術の組合せが自明に思えた場合でも、実際は自明ではなかったであろう。その理由は、先行技術の組合せでは、~という特別な効果を得ることができないためである。」

これは基本的に、採算性がない反論となります。すなわち、(a)技術の組合せによって、特別な効果が得られるとの主張、そして(b)引例の組合せが自明であるとの主張をしているのですが、(a)と(b)の主張がともに正しいとすれば、これまでそれらの先行文献の組合せを誰も行わなかったのはなぜでしょう。この特別な効果を得るため自明の手段を講じた人がいたのは確実でしょう。

この反論は、限られた状況でのみ米国で有効です。例えば、この反論は、In re Japikse, 181 F.2d 1019, 86 USPQ 70 (CCPA 1950)(MPEP 2144.04 VI C.参照)に基づく部品の配置変更による拒絶に応答するための主な方法となります。また、この議論は、「通常の実験(routine experimentation)」による拒絶に対する「結果に影響を与える変数(results-effective variable)」の応答時の基本的な考え方でもあります(MPEP 2144.05 II)。

しかし、この反論は米国では一般的に説得力がありません。米国の立場からすると、不採算的な反論はクレームが「一応自明」であるかどうかの主張には使用できません。つまり、クレームに記載の発明が先行技術によって示唆されている場合には、関連する利点があっても問題がないのです。「先行技術の示唆に従って当然に生じるであろう別の利点を[出願人が]認めたという事実は、その相違が他の点において自明である場合には、特許性の根拠にはならない。」MPEP 2145 II(Ex parte Obiaya, 227 USPQ 58, 60 (BPAI 1985)引用)、同書(Lantech Inc. v. Kaufman Co. of Ohio Inc., 878 F.2d 1446, 12 USPQ2d 1076, 1077 (Fed. Cir. 1989)引用, cert. denied, 493 U.S. 1058 (1990)(非公開)(「先行技術の示唆を行うことに関する追加の利点を述べても、その他の点で特許性のない発明に特許性を付与することにはならない。」))。

つまり、米国の観点からは「部品の配置変更」や「通常の実験」は特殊な場合であって、クレームに記載の発明に到達するために、審査官は先行技術との相違を解消することが求められます。しかし、先行技術との相違が見られない場合には、不採算的な反論によって特許性を立証することはできません。


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