審査官の経験値に関するご質問をいただくことが少なくありません。案件担当の審査官の序列について出願人が知るためにはどうすればよいでしょう。
まず、「部分署名権限(partial signatory authority)」を持っている、もしくは主任審査官(Primary Examiner)である、という場合に、審査官に実績があると言えます。非常に経験豊富な審査官であっても、これらの立場を有していない場合があります。
また、審査官の実績は、審査官に直接尋ねる以外に知り得る方法がほとんどありません。しかし、審査官に直接尋ねると、答えてくれることがほとんどです。審査官が単独でインタビューを実施できるか、といった特定の業務の可否にこの質問が直接関係するため、インタビューの日程を決める際には確認しておくのが得策です。(審査官は通常、米国特許商標庁(USPTO)での勤務年数についての質問にも答えてくれますが、勤務年数の質問はあまり意味がなく、失礼に響く可能性があります。)
特定の手続きには主任審査官(Primary Examiner)の関与が必要となるため、審査官が主任審査官であるかどうかがオフィスアクションに明示されるのが一般的です。例:MPEP1004参照 そこで、主任審査官という肩書を署名に加えています。
/Shinji Ikari/
主任審査官(Primary Examiner)
主任審査官との肩書きがあると、信頼性が高まるのが一般的です。したがって、主任審査官であれば、署名欄に明記する(「主任審査官(Primary Examiner)」と書く)のが通例です。
そこで、明記がなければ、業績は不明と言えます。
例えば、新任審査官の中には、オフィスアクションの署名欄にイニシャルのみを記す人もいます。この場合の署名は、審査長(SPE:Supervisory Patent Examiner)または主任審査官(Primary Examiner)の署名が追加されます。
/S. I./
特許審査官
/Gendo Ikari/
審査長(Supervisory Patent Examiner)
これらの審査官は経験が浅く、「部分署名権限(partial signatory authority)」を有していない可能性があります。そのような審査官のオフィスアクションでは、イニシャルのみとなります。
これらの審査官は、米特許庁内の署名権限プログラム(Signatory Authority Program)の第1部を完了すると「部分署名権限(partial signatory authority)」が付与されます。権限が付与されると、イニシャルではなく、自身の名前を使った署名が可能となります。
/Shinji Ikari/
特許審査官
特許審査官の署名に、審査長(SPE)または主任審査官(Primary Examiner)の署名がなされることもあります。
/Shinji Ikari/
特許審査官
/Asuka Sohryu/
主任特許審査官(Primary Patent Examiner)
オフィスアクションの種類によって、署名の種類が定められています。例えば、「部分署名権限」を有する審査官は、ノンファイナルOAであれば自分で署名できます。しかし、ファイナルOAに単独で署名することができません。MPEP1005参照 このように、案件の状態を見れば審査官の序列を伺い知ることができるのです。
いずれにしても、署名の方法は米国特許商標庁(USPTO)の中でも揺れています。審査業務をはじめたばかり(つまり「部分署名権限」が付与される相当前)であっても、フルネームで署名する審査官もいれば、主任審査官なのにイニシャルのみを使って特許査定(Notice of Allowance)に署名することもあります。
上記の傾向は、10年以上にわたってUSPTOの審査官と密にかかわってきた中で気づいた経験をもとにしています。はじめイニシャルで署名をしていた審査官が、次に名前を使って署名をし、そしてついに主任審査官になった、といった例を見たことがあります。その審査官による直近のオフィスアクションでは、3つの署名がすべて含まれているものがありました。
/Asuka Sohryu/
主任特許審査官
/Asuka Sohryu/
特許審査官
/A. S./
審査官の経験値の評価に関してモダル(Modal PLLC)がお手伝いできることがあれば、ご連絡ください。